透析はいつから始める?導入のタイミングと判断基準を詳しく解説

透析はいつから始める?導入のタイミングと判断基準を詳しく解説

腎臓の機能が低下し透析が必要になる可能性を医師から伝えられると不安を感じます。「いつから透析導入を始めるのか」と、気にしながら過ごしているのではないでしょうか。

透析の開始には基準が設けられています。

  • 腎機能の数値
  • 体に現れる症状
  • 日常生活への影響

という3つの視点から総合的に評価されます。

ただし身体の状態には個人差があるので、同じ数値でも透析導入が必須な方もいれば、まだ先に伸ばせる方もいます。

この記事では、透析導入の具体的な判断基準から、導入前に必要な準備、治療法の選択肢、そして導入後の生活まで、段階を追って解説します。正しい知識を持っておくと医師との対話もスムーズになり、自分に適した治療計画を立てられるようになります。

目次

透析導入を判断する基準とは

透析をいつ始めるべきかという判断は、医師の経験や感覚だけに頼るものではありません。具体的な基準に基づいて、透析導入のタイミングが決定されます。

透析導入の目安
①生命の危機がある場合

GFR値が<15ml/min/1.73㎡となった場合に必要性を考慮

②腎不全兆候が存在する場合

GFR値が<8ml/min/1.73㎡となった場合

③GFR値が<2ml/min/1.73㎡となった場合

腎不全兆候を認めなくても導入

参考:腎不全  治療選択とその実際|一般社団法人 日本腎臓学会

この基準では、腎機能を示す検査値、体に現れている症状、そして日常生活にどれだけ支障が出ているかという点から透析導入の必要性を判定する仕組みです。

客観的な指標によって、導入が早すぎたり遅すぎたりするリスクを減らすことが目的です。一人ひとりに適切なタイミングで治療を開始できるとされています。

ただし、基準はあくまで目安です。年齢や体格、合併症の有無など、個別の状況も考慮した上で最終的な判断が下されます。

腎機能と臨床症状と日常生活障害度の3つで評価

1991年度に、厚生科学研究の腎不全医療研究班によって慢性腎不全導入基準が設けられました。その後に行われた検証によって導入基準の妥当性が示されています。

導入基準は腎機能や臨床症状、日常生活障害度などを重症度や数値などで点数化し、合計点数が60点以上になった時に透析導入の適応になるとされていました。ところが導入年齢の高齢化などで基準を満たさない症例が増加しました。

現在も導入基準の点数制を用いている医療機関も見つかりますが、全病院で使用必須のものというわけではありません。あくまで目安となるもので、症状やQOLなどを総合的に判断して透析導入が決定します。

クレアチニン値やeGFRだけでは決まらない理由

クレアチニンは筋肉から産生される老廃物であるため、筋肉量の多い若い男性では高めに、高齢者や女性では低めに出る傾向があります。

このため、同じクレアチニン値8mg/dLでも、体格の大きな人と高齢で筋肉量の少ない人では、実際の腎機能の状態が大きく異なる可能性があるのです。

高齢者の場合も、クレアチニン値が少し高い程度でも末期腎不全に近い可能性があります。そのため、かかりつけ医や専門医の判断が重要になってくるのです。

参考:維持血液透析ガイドライン:血液透析導入

また、検査値が透析導入の基準に達していても、本人に自覚症状がなく日常生活に支障がない場合は、すぐに透析を始めるのではなく経過観察を続けることもあります。

透析が必要になるサインと体に現れる症状

腎機能が低下しても、初期の段階では自覚症状がほとんど現れません。しかし、腎臓の働きが健常者の10%以下にまで落ち込むと、体内に老廃物が蓄積して尿毒症と呼ばれる状態になり、さまざまな症状が出始めます。

現れる症状は、透析導入の判断において検査値と同様に重要な材料となります。

症状が強く出る前に透析を開始することで、その後の生命予後や生活の質を良好に保てるため、患者さん自身が体調の変化を見逃さず、早めに医師に伝えることが大切です。

尿毒症による吐き気や食欲不振の出現

腎臓の働きが低下すると、本来は尿として排出されるべき老廃物が体内に蓄積し、血液中に尿毒素と呼ばれる有害物質が増加します。

尿毒症の消化器症状
  • 吐き気・嘔吐
  • 食欲不振
  • 朝起きたときの吐き気
  • 食事が美味しく感じない

食欲不振が続くと必要な栄養を摂取できず、体重減少や体力低下を招き、透析導入後の回復にも影響が出る可能性があります。透析導入基準でも、消化器症状は臨床症状の評価項目として重視されています。

症状が出始めたら我慢せず、早めに医師に相談してください。栄養状態の悪化を防ぎ、適切なタイミングでの透析導入につなげられるでしょう。

体液貯留によるむくみや息切れの症状

腎臓の働きが低下すると、水分や塩分を尿として十分に排出できなくなり、体内に余分な水分が蓄積していきます。

段階症状
初期くるぶし周辺のむくみ
進行期全身のむくみ→顔や手のむくみ
重症期肺水腫、息切れ、起坐呼吸、夜間の呼吸困難
体液貯留による症状

重症期になると、肺に水分が溜まる肺水腫を引き起こし、階段の上り下りや軽い運動での息切れ、横になると呼吸が苦しくなる起座呼吸といった症状が出現します。

風邪を引いていないのに咳や痰が出る、夜間に息苦しくて目が覚めるといった症状も、肺への水分貯留のサインです。

体液過剰の状態が続くと、心臓に大きな負担がかかり心不全を発症するリスクが高まります。心不全は透析患者の主要な死因の一つであり、放置すれば命に関わる状態です。

むくみや息切れといった症状が現れたら、透析導入を検討する重要なタイミングと判断されます。

管理できない高カリウム血症や貧血の進行

腎機能が低下すると、食事制限や薬物療法だけでは血液中のカリウム濃度や貧血をコントロールできなくなる場面が出てきます。

血清カリウム値6.0mEq/L超
ヘモグロビン値10g/dL以下
透析導入を検討する血液検査の基準

高カリウム血症は、血清カリウム濃度が5.5mEq/L以上の場合をいいます。血清カリウム値が6.0mEq/Lを超えて上昇すると、心臓のリズムが乱れる不整脈を引き起こし、重症化すれば心停止に至る危険があるとされています。

カリウム吸着薬を服用しても数値が下がらない状態は、透析導入を検討する明確なサインです。

参考:生命予後からみた維持透析患者の適正血清カリウム値の検討

同時に進行するのが腎性貧血の悪化です。腎臓から分泌される造血ホルモンのエリスロポエチンが不足し、赤血球の産生が追いつかなくなります。

貧血治療薬を使用しても、ヘモグロビン値が10g/dL以下まで低下すると、少し動いただけで強い倦怠感や動悸、息切れが現れ、日常生活に支障をきたすようになります。

定期的な血液検査でカリウム値や貧血の数値が悪化する一途で、内科的治療では改善が見込めなくなった時点で、透析による直接的な血液浄化が必要と判断されます。

日常生活の活動性が低下してきたとき

透析導入を判断する基準では、日常生活障害度が評価項目の一つとして重視されています。

腎機能の低下に伴い、以前は難なくこなせていた買い物や掃除といった家事、仕事での階段の昇り降り、趣味の活動などが次第に負担になっていきます。

慢性的な倦怠感や体力低下により、活動後の回復に時間がかかるようになり、外出を控えるようになるなど、生活範囲が狭くなっていくのです。活動性の低下は、患者さん自身だけでなく、家族が気づきやすい変化でもあります。

「最近元気がない」「疲れやすくなった」といった家族の観察も、透析導入のタイミングを見極める大切な情報となります。

血液透析と腹膜透析の2つの選択肢

透析療法は大きく分けると医療施設で行う「血液透析」と、自宅で行う「腹膜透析」の2つの方法があります。

透析療法実施場所仕組み
血液透析医療施設体外で血液を浄化
腹膜透析自宅腹膜を利用して血液を浄化

どちらの方法も腎臓の働きを代行するという目的は同じですが、通院の頻度や治療にかかる時間、日常生活への影響が異なります。患者の方の仕事や家庭の状況、年齢、合併症の有無などを考慮し、医師と相談しながら自分に合った治療法を選択しましょう。

選択肢があるためライフスタイルに応じた治療に近づけられ、一定の生活の質を保ちながら透析を続けられる可能性が広がります。

通院して週3回行う血液透析の仕組み

血液透析は病院や透析クリニックに通院して行う治療で、週3回、1回4時間程度のペースで行います。日本で最も普及している透析方法です。

血液透析治療の流れ
  1. 腕に作ったシャントと呼ばれる血管に針を刺す
  2. 血液をポンプで体外に取り出す
  3. 取り出した血液がダイアライザー(透析器)を通過
  4. 老廃物や余分な水分が透析液に移動して除去
  5. きれいになった血液が再び体内に戻る

循環を4時間かけて行い血液を浄化していきます。医療スタッフが常に血圧や体調の変化を監視しながら治療を進めるため、安全性が高いという特徴があります。

透析中は横になって本を読んだりテレビを見たりすることもでき、管理された環境で確実に老廃物を除去できる点が大きな利点です。

自宅で毎日行う腹膜透析の特徴

腹膜透析は、自宅で患者本人が行う在宅治療です。内臓の表面や腸壁の内面を覆っている腹膜という薄い膜を利用して行います。腹膜透析患者の約40%が自動腹膜透析での治療を行っています。

腹膜透析治療の流れ
  1. 透析液を腹腔内に一定時間入れる
  2. 腹膜の毛細血管を介して血液中の老廃物や余分な水分が透析液に移動
  3. 老廃物を含んだ透析液を体外に排出
  4. 新しい透析液と交換して血液を浄化

腹膜透析には頻度や手段が異なる2種類の方法があります。

腹膜透析の方法頻度交換の手段
CAPD
(連続携行式腹膜透析)
3~5回/日患者または家族が交換
APD
(自動腹膜透析)
就寝中機械で透析液を自動交換

CAPD、APDいずれも1回の交換にかかる時間は20〜30分程度で、通院は月1〜2回と少なく、仕事や学業を続けながら治療できる点が大きな利点です。

ただし、自宅で透析液の交換を正しく行い、カテーテルの出口部を清潔に保つなど、感染予防のための自己管理能力が求められます。また、操作方法を習得する必要があるため、導入時には入院して十分な指導を受けます。

ライフスタイルや年齢に応じた治療法の選び方

透析方法の選択では、患者さんの生活状況や年齢を考慮して判断します。

スクロールできます
血液透析腹膜透析
適していると想定される方医療スタッフの管理下で治療を受けたい
定期的な通院が可能
フルタイムで仕事を続けたい
若年者、学生
高齢者のケースでのチェックポイント自宅で介助者がいない
交換の操作習得が難しい
自宅に透析液を保管するスペースがない
清潔な環境維持が難しい
自己管理能力がある
通院が困難家族の介助あり

最終的には、医師から両方の治療法について十分な説明を受け、メリットとデメリットを理解したうえで、自分の生活に最も適した方法を相談しながら決定していきます。

透析開始前に必要な準備と手術の流れ

透析治療を始める前には、選択した治療法に応じた外科的処置が必要です。血液透析ではシャント作成手術、腹膜透析ではカテーテル設置手術を行い、それぞれ手術後に一定の期間を置いてから透析を開始します。

計画的に準備を進め、体調が安定した状態で透析を開始できるようにしましょう。合併症のリスクを減らすことができます。

逆に、準備期間が十分に取れないまま緊急で透析を始めると、理想的な条件での導入が難しくなります。医師と相談のうえ早めに治療法を決定し、余裕を持って準備してください。

血液透析ではシャント作成手術が必要

血液透析を行うには、1分間に約200mlもの大量の血液を体外に取り出す必要があるため、通常の静脈では血流量が足りません。そこで、腕の動脈と静脈を手術でつなぎ合わせ、動脈の豊富な血流を静脈に流すことで太い血管を作ります。

これをシャントと呼び、透析治療の命綱となる重要な血管です。

参考:慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン

手術は多くの場合、利き腕ではない方の手首近くで行われます。局所麻酔で動脈と静脈を縫い合わせる手術を行い、所要時間は1時間から2時間程度です。

医療機関によって日帰り手術か短期入院かは異なりますが、体への負担が比較的少ない手術です。手術後は、シャントを長持ちさせるための管理が必要です。

シャント管理の注意点
  • シャント部分を圧迫しない(腕時計や締め付けの強い衣服を避ける)
  • 毎日血流の音を確認
  • 透析日の入浴は控える(感染予防)

シャントは透析開始の1ヶ月以上前に作成

シャント手術を受けてもすぐには透析を始められません。動脈と静脈をつないだ部分から静脈全体に動脈の血流が十分に行き渡り、血管が太く発達するまでに2週間から4週間ほどの成熟期間が必要だからです。

期間を待たずに針を刺すと、血管を傷めたり血流が不十分で透析効果が得られなかったりするおそれがあります。計画的な透析導入では、腎機能の検査値や体調をみながら透析開始が予測できる段階で、余裕をもってシャント手術を受けてください。

一方、体調が急激に悪化して緊急透析が必要になった場合は、首や足の付け根にカテーテルを入れて透析を開始します。しかしカテーテルは感染リスクが高く、長期使用には向きません。

緊急透析の事態を避けるためにも、主治医と適切な時期を相談しておきましょう。

腹膜透析ではカテーテル挿入手術を実施

腹膜透析を行うには、お腹の中に透析液を出し入れするためのカテーテルと呼ばれるチューブを埋め込む手術が必要です。手術には2種類あります。

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従来法段階的腹膜透析導入法
(SMAP法)
入院期間1ヶ月程度入院1回目:5日~1週間
2回目:3日~1週間
手術全身麻酔・硬膜外麻酔1回目:全身麻酔・硬膜外麻酔
2回目:局所麻酔
手術内容カテーテル留置1回目:カテーテル留置
2回目:カテーテル出口部作成
透析開始カテーテル留置後すぐ開始透析が必要となった段階で出口部作成後すぐに開始
※入院期間等は医療機関によって異なる場合があります。必ず受診先でご確認ください。

カテーテルはお腹の中から皮膚の下を通り、へその横あたりから体外に出るように配置されます。

手術後は、カテーテルが皮膚から出ている部分(出口部)の管理が非常に重要です。カテーテルは体外と腹腔が直接つながっているため、出口部の清潔が保たれないと感染を起こし、腹膜炎につながる危険性があります。

手術直後は出口部に赤みがみられることもあります。毎日の洗浄と消毒を続けると次第に落ち着き、皮膚組織とカテーテルがしっかり固定された安定した状態になっていきます。

入浴時にはカテーテルが濡れないよう防水カバーで保護するなど、日常生活での注意も欠かせません。

段階的導入で体を慣らしていく方法

透析を始めたばかりの時期は、いきなり標準的な透析時間や頻度で治療を行うと、体内環境が急激に変化して不均衡症候群と呼ばれる症状が起こることがあります。

これは血液中の老廃物が速やかに除去される一方で、脳内には老廃物が残りやすく、濃度差によって頭痛や吐き気、嘔吐といった症状が生じるものです。

こうした症状を防ぐため、透析導入時には血液流量を抑えたり、透析時間を短くしたりして、徐々に体を透析に慣らしていく方法が一般的です。

例えば最初は2時間程度の短い透析から始め、数日から1週間かけて標準的な4時間程度まで延ばしていきます。透析液の除去量も少なめに設定し、段階的に増やして体への負担を軽減します。

特に高齢者や栄養状態が低下している患者、長期間老廃物がたまっていた場合は、より慎重に時間をかけた導入が必須です。段階的な導入によって、体が透析に慣れ、安定した治療を継続できるようになります。

透析導入入院~治療の費用の目安

1ヶ月の透析治療の医療費の目安は外来血液透析では約40万円、腹膜透析では30万円~50万円とされています。

費用が高額で不安になる方も多いのではないでしょうか。ですが透析治療には、負担軽減制度が利用できる場合もあります。

また、透析患者は身体障害者手帳で多くの場合1級に認定されます。自治体によって独自の助成制度が設けられており、自己負担がさらに軽減される場合があります。公的支援制度を活用すれば、経済的な負担を大きく抑えられるでしょう。

特定疾病療養受療証で自己負担額が軽減

透析治療には高額な医療費がかかりますが、特定疾病療養受療制度を利用すると、医療機関での自己負担額が大幅に軽減されます。

人工透析を必要とする慢性腎不全は、厚生労働大臣が指定する特定疾病に該当し制度の対象となります。制度を利用すると月の自己負担額は所得に応じて1万円が上限です。

ただし一定以上所得がある場合には2万円が上限で、外来、入院、薬局等それぞれでの負担となります。透析導入時の入院時の食事代は自己負担です。

参考:透析治療にかかる費用

制度を利用するには、加入している健康保険(健康保険組合、協会けんぽ、市町村国民健康保険課など)や、後期高齢者広域連合の窓口で申請します。受療証が交付されたら、医療機関の窓口で保険証と一緒に提示すれば、費用が軽減できます。

身体障害者手帳の申請手続きについて

透析治療を継続している患者は、腎臓機能障害により多くの場合で身体障害者手帳1級に認定されます。

身体障害者手帳を取得すると利用できる主な福祉サービス
  • 医療費助成
  • 公共交通機関の運賃割引
  • 税制優遇
  • 自動車税の減免
  • 高速道路料金の割引

申請には、身体障害者福祉法第15条指定医師が作成する診断書・意見書が必要です。透析を担当している医師に診断書の作成を依頼し、申請書、本人写真、印鑑とともに市区町村の福祉担当窓口に提出します。

申請から手帳交付までは1か月から2か月程度かかります。手帳を取得すると、障害者医療費助成制度で医療費の自己負担分が助成される場合があります。ただし自治体によって年齢制限や所得制限があるため、事前に確認が必要です。

また、障害年金の申請資格も得られるため、経済面での支援がさらに手厚くなります。医療費以外の生活支援制度も積極的に活用しましょう。

透析開始後の生活と注意すべきポイント

透析治療を開始すると、血液透析なら週3回の通院や食事制限など、生活が大きく変わります。しかし自己管理と医療スタッフのサポートにより、多くの方が仕事や趣味を続けながら充実した生活を送っています。

透析開始直後は体が治療に慣れるまで疲労感や血圧変動を感じることがありますが、徐々に体調は安定していきます。長期的に透析と向き合うためには、日常生活での注意点を押さえておきましょう。

また、感染症や心血管疾患などの合併症を予防しながら、生活の質を維持することも大切です。透析は一生続く治療ですが、正しい知識と前向きな姿勢があれば、自分らしい人生を歩むことができます。

医療チームと連携しながら、無理のない範囲で日常生活を楽しむ工夫を見つけていきましょう。

ドライウエイトの設定と体重管理の方法

ドライウエイトとは、透析終了後に達成すべき目標体重で、体内に余分な水分がない適正な状態を指します。血圧や心胸比、心エコー検査などの医学的指標をもとに医師が決定し、通常は月1回程度の検査で見直しが行われます。

透析患者では尿として水分を排出できないため、体重管理がそのまま水分管理につながります。

透析間隔体重増加の目安例(DW 50kgの場合)
中1日DWの3%以内1.5kg以内
中2日DWの5%以内2.5kg以内
透析間の体重増加の目安

例えばドライウエイト50kgの方なら、中1日で1.5kg以内、中2日で2.5kg以内が目安です。体重増加が多すぎると心臓への負担が増し、透析中の血圧低下やショックのリスクも高まります。

体重管理には塩分制限が不可欠で、透析患者の塩分摂取目標は1日6g未満です。塩分を摂りすぎると喉が渇き、水分摂取が増えてしまうためです。

塩分制限のための調理の工夫
  • 調味料を測る習慣をつける
  • 汁物の汁は残す
  • 加工食品を控える

また、体調の変化や栄養状態によってドライウエイト自体も変化するため、むくみや息苦しさなど気になる症状があれば、遠慮せず医師に相談して設定を見直してもらいましょう。

シャントの音や振動で状態を確認する習慣

血液透析を受ける患者にとって、シャントは透析治療に欠かせない命綱です。シャント部分を指で触れると「ザーザー」という振動が感じられ、これをスリルと呼びます。

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状態音の特徴振動(スリル)対応
正常・ザーザー
・ゴーゴー
(低く連続)
感じられる継続観察
異常・ヒューヒュー
・キューキュー
(高い音)
・音が弱い
感じられないすぐに透析施設に連絡
聴診器をシャントに当てたときの音の比較

音や振動が正常と異なる場合は、血管の狭窄や閉塞の可能性があります。また、シャント部分に赤みや熱感、痛みがある場合は感染の兆候で、放置すると大出血や全身感染につながる危険があります。

1,000円程度の聴診器で構わないので購入し、毎日シャント音を確認する習慣をつけましょう。毎日聞いていると「いつもの音」がわかるようになり、わずかな変化にも気づけるようになります。

シャントトラブルは時間が経つと対応が難しくなります。最終的に作り直しの大手術になるため、異常を感じたらすぐに透析施設に連絡してください。

透析後の生活の質を保つための工夫

透析治療は一生続きますが、適切な管理と工夫により、多くの方が充実した生活を送っています。透析を受けながら仕事を続けたり、起業したり、趣味や旅行を楽しんでいる患者も少なくありません。

ライフスタイルQOLを保つためにできる工夫など
仕事夜間透析や在宅透析の選択肢
リモートやフレックスなど柔軟な働き方を見つける
旅行事前に主治医に相談
訪問先の透析施設を予約(海外も可)
食事水分・塩分・カリウムの管理
管理栄養士の指導を受ける
制限中でも楽しめる調理法や食材選び
運動筋力低下のために適度な運動
ウォーキング、ストレッチ、軽い筋力トレーニングなど
社会活動外出、趣味、地域活動への参加

透析は社会復帰のための手段であり、病気だからといってすべてあきらめてしまう必要はありません。ただし体力面で無理をせず、自分のペースで人生を楽しむ姿勢が大切です。

医療チームと協力しながら、前向きに透析生活と向き合いましょう。