病院に行きたがらない高齢の親にどう伝える?説得術と相談先

病院に行きたがらない高齢の親にどう伝える?説得術と相談先

高齢の親が「病院に行きたくない」と言い張り、どう声をかければいいか悩んでいる方は少なくありません。親には親なりの理由や不安があり、無理に連れ出そうとするとかえって関係がこじれることもあります。

この記事では、病院に行きたがらない親の気持ちや背景を整理しながら、受診につなげるための伝え方の工夫や、家族が相談できる支援先について紹介します。

焦らず、親のペースを尊重しながら向き合うためのヒントをまとめました。

目次

病院に行きたがらない親の理由と気持ちを理解する

病院に行きたがらない親には、多くの場合、その人なりの考えや背景があります。家族が心配するあまり「早く受診したほうがいい」と強く勧めても、気持ちがかみ合わず、話し合いが進まないことも少なくありません。

まずは親がなぜ受診に前向きになれないのか、その理由や心理を理解することが大切です。

「自分はまだ大丈夫」という認識のずれ

高齢者が受診をためらう理由のひとつに、「自分には特に問題はない」という認識があります。認知機能に関する相談の場でも、「自分はおかしくないと思っている」という声が多く聞かれるとされています。

体調の変化を感じていても、「年齢のせいだろう」と受け止めていたり、家族に心配をかけたくないという思いがあったりと、その受け止め方は人それぞれです。

認識の違いを強く否定すると、かえって話し合いが難しくなることもあるため、本人の気持ちを尊重しながら話を進めることが大切です。

検査結果や病名を知ることへの不安

「病気だと言われるのが怖い」という心理も、受診を拒む大きな理由のひとつです。

病名を告げられることが生活の変化や自立の喪失を連想させるため、本人は薄々気づいていても「確定されたくない」と感じることがあります。

「認知症」「検査」といった特定の言葉を強調するよりも、「体の状態を確認するため」といった、やわらかい表現で提案することで、心理的な負担が軽くなることもあります。

体力の低下や通院の負担で外出をためらう

受診への抵抗は、気持ちの問題だけとは限りません。年齢とともに体力が低下すると、病院までの移動や待ち時間そのものが大きな負担になることがあります。

厚生労働省が公表している患者調査(令和5年)では、在宅医療を利用する外来患者の数が増加傾向にあることが示されています。

「行きたくない」というよりも、「行くのが大変」「行きづらい」と感じているケースも考えられるでしょう。

移動手段の工夫や付き添いの調整、通院以外の医療サービスについて情報を集めるなど、環境面から負担を減らす視点も検討してみるとよいでしょう。

病院に行きたがらない親への伝え方と受診につなげる工夫

親の気持ちや背景を理解できたら、次に考えたいのが伝え方の工夫です。同じ内容でも、言い方や伝える順番によって受け取られ方は大きく変わります。

強く促すよりも、気持ちに寄り添う姿勢を意識することで、結果的に受診につながるケースも見られます。

親の不安を否定せず気持ちを受け止める

不安を抱えている親に対して、いきなり否定的な言葉を向けると、話を聞いてもらいにくくなることがあります。

まずは「不安に感じるのは無理もないよね」とまず気持ちを受け止めたうえで、「一度だけ相談してみない?」と穏やかに提案すると、心理的な負担が軽くなる場合があります。

「一緒に行こう」と誘い指示や命令の言葉を避ける

「病院に行きなさい」といった言い方は、親の自尊心に触れ、かえって反発を招くこともあります。それよりも、「一緒に行って話を聞いてみたい」「私も状況を知っておきたい」といった形で誘うほうが、受け入れられやすい傾向があります。

「あなたのため」という言葉が重く感じられる場合には、「家族として安心したい」という伝え方に変えるだけでも、受診へのハードルが下がることがあります。

信頼している人から受診をすすめてもらう

家族の言葉には抵抗を感じても、親しい知人や信頼している人の意見であれば、素直に受け止められることもあります。

同年代の友人が自身の経験を話したり、普段から接している医師がさりげなく声をかけたりすることで、受診を前向きに考えるきっかけになる場合もあります。

「何を言うか」だけでなく、「誰から伝えるか」という視点も大切です。

健康診断やかかりつけ医の受診をきっかけにする

いきなり専門的な受診を勧めるのではなく、「健康診断を受けてみない?」「血圧を測ってもらおう」といった、日常の延長として提案する方法も1つです。

あらかじめ、かかりつけ医に家族の状況や心配している点を伝えておくと、当日の対応がスムーズになることもあります。無理に結論を急がず、自然な流れを作ることで、結果的に受診につながる可能性も高くなるでしょう。

病院に行きたがらない親を支える相談先と受診手段

家族だけで受診を促そうとしても、うまくいかない場面は少なくありません。

そのようなときは、外部の相談先や通院以外の受診方法を知っておくことで、選択肢が広がります。

地域包括支援センターで専門スタッフに相談する

地域包括支援センターは、高齢者本人やその家族からの相談を受け付けている公的な窓口です。厚生労働省の資料によると、全国に5,487か所(令和7年4月時点)設置されており、社会福祉士や保健師などの専門職が配置されています。

​​「親が病院に行きたがらない」「どこに相談すればよいかわからない」といった内容でも相談が可能で、状況に応じた助言や、医療・介護サービスに関する情報提供を受けられる場合があります。

家族が遠方に住んでいる場合でも、親の居住地のセンターへ電話相談が可能です。

訪問診療やオンライン診療で自宅から受診する方法

外出そのものが負担になっている場合には、医療機関へ出向く以外の受診方法を検討することも一案です。

医師が自宅を訪れる訪問診療や、情報通信機器を利用して行われるオンライン診療は、通院が難しい人にとって選択肢のひとつとです。

オンライン診療については、操作が難しい場合に家族や訪問看護師などが補助する形で行われるケースもあり、制度上認められている範囲で運用されています。

こうした対応が可能かどうかは医療機関ごとに異なるため、まずはかかりつけ医や近隣の医療機関に確認してみるとよいでしょう。

病院に行きたがらない親と向き合うときに大切なこと

受診の実現はゴールではなく、親との長い関わりの一部です。信頼関係を保ちながら向き合う姿勢を積み重ねることで、結果的に受診への理解につながることもあります。

本人の意思を尊重して無理に強制しない

本人に十分な説明をしないまま病院へ連れ出すと、「だまされた」という気持ちが残り、家族への不信感につながるおそれがあります。一度損なわれた信頼関係を取り戻すには、時間と労力がかかる場合も少なくありません。

本人が納得したうえで受診した場合、医師の話や検査についても受け止めやすくなる傾向があると指摘されています。

「今すぐでなくてもいい」「今日は話を聞くだけでもいい」といった余裕のある姿勢を示すことで、気持ちが少しずつ動くこともあります。

家族だけで抱え込まず外部の支援に頼る

親の受診について悩む状況を、家族だけで抱え続ける必要はありません。

地域包括支援センターや、認知症初期集中支援チームなど、家族以外の立場から助言や支援を受けられる仕組みも用意されています。

「自分たちで何とかしなければ」と思い詰めるよりも、利用できる制度や相談先を早めに知っておくことが、心の負担を軽くすることにつながります。