最近、疲れやすくなったと感じることはありませんか。なんとなく身体のだるさがある、足がむくんでいるのは腎臓からのサインかもしれません。
腎臓は体内の老廃物を排出し、血液をきれいに保つ役割を果たす臓器です。しかし、働きが低下すると、全身にさまざまな影響が現れます。
腎臓の機能低下は初期段階では自覚症状がほとんどありません。多くの方が健康診断で初めて気づくケースが多いのです。自覚症状がないからといって放置すれば、むくみや貧血、さらには透析治療が必要になる可能性もあります。
この記事では、腎臓が悪くなるとどのような症状が現れるのか、進行段階ごとにわかりやすく解説します。早期発見し適切な対処を知っておくと、進行を遅らせられる可能性が高まるのです。
腎臓が悪いと体に起こる変化と働きの低下
腎臓は握りこぶし大の臓器で、腰の両側に左右一つずつあります。小さな臓器ですが、体を正常な状態に保つため、24時間休むことなく働いているのをご存じでしょうか。
腎臓は生命維持に欠かせない複数の働きを担っています。健康な腎臓は血液をろ過し、その中から尿を生成します。腎臓の働きが低下すると、老廃物が体内に蓄積し始めます。
水分や塩分の排出もうまくいかなくなり、むくみや高血圧を引き起こす原因となるのです。
腎機能が正常の30%以下まで低下した状態を慢性腎不全といい、さらに進行すれば透析治療や腎移植が必要になります。慢性腎臓病は、初期には自覚症状がほとんどありません。
腎臓が担う5つの役割とフィルター機能
腎臓が私たちの体内で果たす役割は、想像以上に多岐にわたります。腎臓は血液から老廃物をろ過して尿として排出するだけでなく、5つの働きを担っています。
- 老廃物の排泄
- 水分と電解質のバランス調整
- 血圧の調整
- 赤血球を作るホルモンの分泌
- 骨を強くするビタミンDの活性化
腎臓の働きを支えるのが、糸球体と呼ばれる精密なフィルター機能です。
- 毛細血管が毛玉のように丸まった構造
- 非常に細かい網目の状態
- 血液中の老廃物や余分な水分をこし出す
- 高い処理能力
1つの腎臓には約100万個のネフロンという尿を作る機能単位があり、ネフロンは糸球体とボーマン嚢、尿細管で構成されています。
糸球体は赤血球や蛋白質といった大きな分子は通さず、老廃物だけを選別して原尿を作り出すのです。
心臓から送り出される血液の約4分の1が腎臓に流れ込み、1日に約150リットルもの原尿を生成します。その後、尿細管で体に必要な成分の99%が再吸収され、最終的に約1.5リットルの尿として排出されます。
健康な腎臓には高い予備力があります。片方の腎臓を失っても、残った腎臓が代償して機能を維持できることからも、その能力の高さがわかるでしょう。
一度失われた腎機能は特殊な場合を除いて回復しません。また予備力があるため、腎機能が50%以上低下しても自覚症状が現れにくく、発見が遅れる原因となっています。
腎機能が低下すると老廃物が体内に蓄積する
フィルター機能が低下すると、本来なら排出されるはずの老廃物が血液中に溜まり始めます。代表的な老廃物が、クレアチニンと尿素窒素です。本来ならどちらも腎臓でろ過されて尿として排出されます。
| 老廃物 | 由来 | 腎機能低下で現れる症状 |
|---|---|---|
| クレアチニン | 筋肉の代謝産物 | 血液中の値が上昇 |
| 尿素窒素 | 蛋白質の分解産物 | 30~40mg/dLを超えると腎不全の可能性 |
さらに深刻なのが、体液バランスの崩れによる電解質異常です。健康な腎臓は余分なカリウムを尿中に排出し、血中濃度を正常範囲に保ちます。
| 電解質 | 腎機能低下で現れる症状 | 数値の目安 |
|---|---|---|
| カリウム | 高カリウム血症不整脈 心停止のリスク | 高値:5mEq/L 超危険:6mEq/L |
| リン | 骨を弱くする カルシウムと結合して沈着→動脈硬化を促進 | 血清正常濃度:2.5~4.5mg/dL |
参考:血液透析患者のカリウム摂取制限、低リン血症・高リン血症
老廃物や電解質の蓄積が、むくみ、倦怠感、さらには尿毒症といった様々な症状を引き起こす根本原因になるのです。
急性腎障害と慢性腎臓病の違い
腎臓の機能低下には、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。
- 急性腎障害
- 慢性腎臓病
急性腎障害は、数時間から数日という短期間で急激に腎機能が低下する状態です。脱水や出血、薬剤などが原因で発症し、むくみや尿量減少が急速に現れます。
日本腎臓学会によれば、原因を早急に特定して治療すれば、腎機能が回復する可能性があります。
一方、慢性腎臓病は、腎臓の障害や腎機能低下が3ヶ月以上続く状態を指します。数ヶ月から数十年かけて緩やかに少しずつ進行し、一度失われた機能はほとんど回復しません。
- 尿蛋白などの腎障害の存在
- eGFRが60未満の状態が3ヶ月以上持続
治療の方向性もそれぞれ異なります。急性は原因除去による回復を目指し、慢性は進行予防と合併症管理が中心です。
以降では慢性腎臓病を中心に、症状の進行と日常生活への影響について解説していきます。
腎臓が悪い初期段階でほとんど症状が出ない理由
腎臓は機能が著しく低下するまで症状が現れにくい特徴があります。これは腎臓が持つ強力な予備能力によるものです。
腎臓のネフロンのうち一部の機能が失われても残りが代償するため、自覚症状がほとんど出ません。初期段階では尿検査や血液検査でしか異常を捉えられず、症状を自覚できる頃には既にかなり進行している状態なのです。
無症状のまま数年から数十年かけて静かに進行し、気づいた時には透析が必要になっているケースも少なくありません。だからこそ定期的な健康診断による早期発見が極めて重要なのです。
沈黙の臓器と呼ばれる腎臓の特徴
腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれていますが、なぜなのでしょうか。その秘密は驚異的な予備能力にあります。腎臓には左右合わせて約200万個のネフロンが存在し24時間休みなく血液をろ過しています。
しかし、すべてのネフロンが常にフル稼働しているわけではありません。実は健康な状態でも3割程度のネフロンが休息しており、残りで十分に体の恒常性を維持できます。
仮に半数のネフロンが失われても、残ったネフロンが働きを増強して代償する仕組みがあるため、日常生活には支障が出ないのです。
参考:DOHaD学説からみたネフロン数と高血圧・慢性腎臓病の進展
さらに腎臓本体には痛覚神経がほとんど分布していないため、機能が低下しても痛みを感じにくい構造的特徴も持っています。痛みが出るのは、腎臓が腫れて表面を覆う腎被膜が引き伸ばされたときなど、かなり進行した段階です。
健康診断で初めて気づくケースが多い
腎臓病患者の70%以上が健康診断をきっかけに病気が発見されています。尿検査での蛋白尿や血尿の検出、血液検査でのクレアチニン値上昇が発見の主な契機となります。
多くの患者が「まったく自覚症状がなかった」と振り返るように、検査値の異常が唯一のサインであることも珍しくありません。例えば40代の会社員が職場の定期健診で尿蛋白陽性を指摘され、精密検査の結果、慢性糸球体腎炎と診断されるといったケースが典型的です。
自覚症状は透析の直前まで出にくいため、早期発見には検診での尿検査が欠かせません。検尿は安価で簡易な手順ですし、腎障害の早期サインを捉える重要な検査です。
早期発見には定期的な尿検査と血液検査が必要
腎臓の状態を把握するには、尿検査と血液検査の2つが欠かせません。
| 検査項目 | 検査で確認する内容 |
|---|---|
| 尿検査 | 蛋白尿潜血 |
| 血液検査 | eGFR(クレアチニン値から計算) |
年1回以上の定期検査が推奨されますが、糖尿病や高血圧などの基礎疾患を持つハイリスク群の方はかかりつけ医に相談してください。
検査費用は保険適用で、初診時の尿検査が約500〜1,500円、血液検査が約2,000〜3,000円程度(3割負担の場合)です。一般内科、腎臓内科のほか、健康診断を実施している医療機関で受診できます。
異常を指摘された場合は、症状がなくても必ず精密検査を受けましょう。早期発見により進行を遅らせることができるため、定期的な検査習慣が腎臓を守る最も確実な方法なのです。
腎機能低下の進行で現れる体のサイン
腎機能がeGFR60未満(ステージG3)まで低下すると、徐々に体にサインが現れ始めます。夜間に何度もトイレに起きる夜間頻尿や、むくみ、疲れやすさ、顔色の悪さなど、日常生活でも気づける変化が出てきます。
一方で、手足がつる、息切れ、食欲低下といった症状は見逃されやすく、単なる加齢や疲労と考えて放置してしまうケースも少なくありません。
夜間頻尿と尿量の変化が最初の兆候
腎臓の濃縮能力が低下すると、睡眠中に尿を濃くして量を減らす機能が働かなくなり、夜間に2回以上トイレに起きる夜間頻尿が現れます。夜間頻尿は腎機能低下の初期に見られる典型的な症状です。
尿量の変化も重要なサインで、初期には濃縮力低下により1日2.5リットル以上の多尿となることがあります。逆に腎機能がさらに低下すると尿を作る能力自体が失われ、1日400ミリリットル以下の乏尿といわれる状態に転じます。
正常な排尿は1日4〜7回程度、尿量1.0〜1.5リットルです。夜間の排尿回数や1回の尿量を記録しておくと、異常を早期に発見できます。水分摂取量と尿量のバランスに違和感を覚えたら、医療機関を受診しましょう。
足や顔のむくみが左右対称に出る
腎機能が低下すると水分や塩分を十分に排泄できなくなり、体内に余分な水分が貯留してむくみが現れます。腎臓病のむくみは左右対称に出現し、むくんだ部分を指で10秒以上押すとへこんだまま残ります。
- 朝起きたとき:まぶたや顔が腫れぼったくなる
- 日中:重力の影響で下半身に水分が溜まる
- 夕方:足首やすねがむくむ
心不全のむくみは夕方に下肢に強く現れ、肝臓病では腹水を伴うことが多いです。腎臓病の場合は顔と足の両方に左右対称のむくみが現れる点で見分けられます。
尿の泡立ちが消えない場合は蛋白尿の可能性
腎臓の糸球体は本来、血液中の老廃物だけを濾過し、蛋白質など必要な成分は血液中に残します。しかし糸球体のバリア機能が低下すると、蛋白質が尿に漏れ出て蛋白尿となります。
蛋白質には界面活性作用があるため、蛋白尿が出ると尿の泡立ちが目立ち、1分以上経っても細かい泡が消えません。排尿の勢いで一時的に泡立つのは正常ですが、毎回同じ時刻に泡立つ場合や朝一番の尿で泡立ちが続く場合は注意が必要です。
蛋白尿は腎機能悪化を加速させます。漏れ出た蛋白質が尿細管を通過する際、フィルター構造自体を傷つけるため、蛋白尿が多いほど腎臓の機能低下が早く進行します。
そのまま放置すると透析が必要になる可能性が高まります。
倦怠感や疲れやすさが続く状態
腎機能が低下すると、赤血球を作るホルモン「エリスロポエチン」の分泌が減少し、腎性貧血が起こります。全身への酸素供給が不足するため、動悸や息切れ、めまいとともに全身倦怠感が現れます。
貧血は徐々に進行するため気づきにくいという特徴があります。さらに老廃物が体内に蓄積すると、休息しても改善しない慢性的な疲労感が続きます。尿素窒素などの尿毒症性物質が血液中に溜まると、体がだるく疲れやすい状態が持続します。
通常の疲労とは異なり、十分な睡眠をとっても倦怠感が取れません。ただし倦怠感は甲状腺機能低下症やうつ病などでも現れるため、尿検査や血液検査による鑑別が必要です。
腎臓が悪い状態が進むと起こる深刻な症状
腎機能が低下し、血清クレアチニン8mg/dL以上(GFRが10mL/min未満)になると、尿毒症という状態になることがあります。軽い状態は吐き気程度ですが、むくみや血が止まりにくくなる、筋肉のひきつれなど日常生活に大きな支障をきたす症状が現れます。
さらに進行すると呼吸困難や意識障害など生命に関わる症状が出現し、透析治療や腎移植などの腎代替療法が必要です。
貧血による息切れやめまい
腎機能が低下すると、造血ホルモンであるエリスロポエチンの産生が減少し、骨髄での赤血球生成能力が低下します。
| ヘモグロビン値 | 状態 |
|---|---|
| 11g/dL未満 | 治療開始推奨 |
| 10g/dL以下 | 症状顕著(動悸、息切れ、立ちくらみ) |
| 目標値 | 11~13g/dL |
参照:腎性貧血
全身への酸素供給が不足するため、階段を上るときや少し動いただけで息が切れ、心臓が代償的に働くため動悸を感じます。鉄欠乏性貧血とは異なり、鉄剤だけでは改善しないのが特徴です。
治療にはエリスロポエチンの働きを補うESA製剤の注射や、体内でのエリスロポエチン産生を促すHIF-PH阻害薬の内服が用いられ、目標ヘモグロビン値は11〜13g/dLの範囲で管理します。
皮膚のかゆみや乾燥が全身に広がる
腎機能低下により血液中のリンやカルシウムが上昇すると、皮膚組織内にリン酸カルシウムが沈着し、激しいかゆみを引き起こします。さらに尿毒症性物質の蓄積により皮膚が極度に乾燥し、すねから太もも、背中、肩へと広がります。
かゆみは特に夜間に強くなるのが特徴です。かゆい部分をかきこわすなどして色素沈着となり、肌がくすんだり黒っぽくなったりすることもあります。
通常の保湿剤では改善しにくく、抗ヒスタミン薬も効果が得られない難治性のかゆみです。こまめな入浴も対策となりますが、皮膚はこすりすぎないようにしましょう。
十分な保湿ケア、皮膚を冷やす方法が有効とされているためまずは医師に相談してください。
食欲不振や吐き気などの尿毒症症状
腎機能が著しく低下すると、インドキシル硫酸やp-クレシル硫酸といった尿毒症毒素が体内に蓄積します。
尿毒症毒素は腸内細菌がアミノ酸を代謝して産生する物質で、本来は腎臓から排泄されますが、腎不全では血中濃度が著明に上昇し、消化器に強い影響を及ぼします。
食欲不振、悪心、嘔吐が持続的に現れ、食事がほとんど取れなくなります。栄養状態が悪化し体重減少が進行すると、日常生活に著しい支障をきたします。
口からはアンモニア臭と呼ばれる特徴的な尿のような臭いが発生することも。臭いの理由は、尿素が口腔内の細菌によって分解されアンモニアになるためです。
高血圧や心不全のリスクが高まる
腎機能低下により体内の水分と塩分を排泄できなくなると、体液量が過剰に増加し血圧が上昇します。さらにレニン・アンジオテンシン系と呼ばれる昇圧機構が過剰に働き、高血圧が悪化します。
増加した血液量を全身に送り出すため心臓への負担が増し、心筋が厚くなる左室肥大が進行します。左室肥大が進むと心筋の収縮力が徐々に低下し、心不全を発症します。
これは心腎連関と呼ばれる病態で、腎臓と心臓が互いに悪影響を及ぼし合い悪循環を形成します。透析患者の死因を見ると、心不全と心筋梗塞を含む心血管死が約3割を占め、腎臓病患者の主要な死亡原因となっています。
腎臓が悪くなる主な原因と生活習慣との関係
慢性腎臓病を引き起こす代表的な原因は糖尿病と高血圧です。透析導入患者の原因疾患では糖尿病性腎症が第1位で約45%を占め、腎硬化症が第3位となっています。このほか慢性糸球体腎炎も代表的な原因です。
参考:慢性腎臓病(CKD)っていったい何?|公益財団法人 日本腎臓財団
注意しておきたいのは、糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満といった生活習慣病との深い関連性です。生活習慣病は食生活の改善、適度な運動、禁煙、節酒などの生活習慣の見直しによって予防が可能とされています。
糖尿病性腎症が透析原因の第1位
高血糖状態が長期間続くと、腎臓の糸球体を構成する毛細血管が障害を受けます。糸球体は細い血管の集合体であるため糖尿病性細小血管症が起こりやすく、血管が硬化して狭くなると同時にろ過機能が低下します。
初期には尿中に微量のアルブミンが漏れ出し、進行すると大量のタンパク尿が出るようになります。
日本における透析導入原因の第1位は糖尿病性腎症です。糖尿病患者の予備軍を含めると約2,340万人(2019年)が存在し、増加の一途をたどっています。
高血圧や脂質異常症の治療、適切な食事療法と運動習慣も欠かせません。早期発見のため定期的に尿中アルブミン検査を行うことが推奨されています。
高血圧による腎臓の血管へのダメージ
長い期間に渡って高血圧のままだと、腎臓の細小動脈に過剰な圧力がかかり続けます。その状態では血管壁が厚くなって、内腔が狭くなる細動脈硬化が進行します。
結果として糸球体への血流が減少し、糸球体が硬化して尿細管が萎縮します。この状態を腎硬化症といい、徐々に腎機能が低下していきます。
2023年の透析導入患者では腎硬化症が第2位(約19%)を占め、2019年以降増加が続いています。高齢者に多く見られますが、近年は若年者でも増加傾向にあります。
初期には自覚症状がなく、尿蛋白も少ないため発見が遅れやすい特徴があります。
慢性糸球体腎炎や多発性嚢胞腎などの病気
慢性糸球体腎炎の代表的疾患であるIgA腎症は、免疫グロブリンAが糸球体に沈着して炎症を引き起こします。糖鎖異常IgAが免疫複合体を形成し、腎臓の糸球体に沈着することで血尿やタンパク尿が出現します。
日本人に最も多い糸球体腎炎で、約3万人の患者がいると推定されています。
治療の基本は降圧薬や副腎皮質ステロイドを用いた血圧コントロールです。予後の状態により詳細な治療は異なりますので、必ず医師の指導のもと食事療法等を行ってください。
多発性嚢胞腎(PKD)は、PKD1またはPKD2遺伝子の変異により、両側の腎臓に多数の嚢胞が形成される遺伝性疾患です。患者数は約3万人で、60歳までに約半数が透析を必要とします。
学校検尿の普及や治療法の進歩により、慢性糸球体腎炎から透析導入となる患者数は年々減少しています。しかし、原発性腎疾患は早期発見と適切な治療が重要です。
薬剤や脱水が腎機能に与える影響
解熱鎮痛薬のNSAIDsは、プロスタグランジン産生を抑制して腎臓への血流を低下させ、急性腎障害を引き起こすことがあります。造影剤やアミノグリコシド系抗菌薬も腎毒性があり、腎機能に悪影響を及ぼします。
薬剤性腎障害を発症させる原因薬剤として、抗菌薬とNSAIDsが併せて60〜70%を占めるという報告が多くあります。
脱水状態では腎臓への血流が低下し、老廃物がろ過されずに体内に蓄積します。これにより急性腎障害が発症しますが、腎前性腎不全の場合、早期に適切な治療を行えば回復する可能性が高い病態とされています。
末期腎不全と透析が必要になる段階
CKDステージG5(eGFR 15未満)に進行すると末期腎不全の状態となり、腎臓がほとんど機能しなくなります。尿毒症の症状が進行し、肺水腫や心不全、呼吸困難、意識障害など命にかかわる状態となります。
透析導入の判断は腎機能だけでなく、臨床症状や日常生活を総合的に評価して行われます。
透析導入後も適切な管理により、ある程度普通の生活を送ることが可能とされます。血液透析の場合は週3回程度の通院が必要ですが、運動療法や栄養管理により生活の質の向上が期待できます。
eGFR15以下で透析治療を検討する時期
G5のステージ、eGFR値でいうと 15 mL/min/1.73m²以下に低下した段階が透析導入を検討する目安とされています。ただし原疾患や年齢を考慮して、個別に判断されますので値だけで決まるわけではありません。
参考:透析治療‐導入まで(CQ2 CKDにおいて、生命予後に影響する透析導入の基準は何か?)
実際の導入時期の決定は、eGFRの数値だけでなく尿毒症の症状の有無や程度などによっても異なります。
- 体液貯留(むくみ、肺水腫)が利尿薬で管理できない場合
- 管理不能な電解質異常
- 重篤な消化器症状や神経症状
医師は腎機能、臨床症状、日常生活障害度を総合的に評価し、患者と十分に話し合いながら導入時期を決定します。意思決定時には、透析療法の利点と不利益、血液透析と腹膜透析の選択肢、生活への影響などについて詳しい説明が行われます。
患者が納得して治療方針を選択できるようなサポートが受けられますので、担当医ときちんと相談してください。
透析治療が日常生活に与える影響
透析治療には血液透析と腹膜透析があります。主な違いは下記の通りです。
| 血液透析 | 腹膜透析 | |
|---|---|---|
| 通院頻度 | 週3回(各4時間) | 月1回程度 |
| 実施場所 | 医療機関 | 自宅 |
| 食事制限 | カリウムの厳格な制限 | カリウム制限は比較的穏やか |
腹膜透析と血液透析はライフスタイルと身体の状態に応じて選択されます。
食事面では水分制限(1日1000mL程度)、塩分制限(6g未満)、カリウム制限(2000mg以下)、リン制限が必要となり、日常生活の調整が求められます。ただし腹膜透析ではカリウム制限が比較的緩やかです。
就労継続も工夫次第で可能です。夜間透析やアフターワーク透析を利用すれば日中の仕事時間を確保でき、旅行や出張の際は臨時透析を利用できます。
実際に透析を受けながら仕事を続けている患者も多く、社会生活との両立は十分に実現可能です。
放置すると命に関わる尿毒症や心不全
透析導入を拒否・遅延すると、尿毒症性昏睡、肺水腫、高カリウム血症などの重篤な合併症が進行します。
高カリウム血症では血清カリウム値が6.5mEq/L以上になると心室細動や心静止に至る危険があり、透析患者の死亡原因の約3.6%を占めています。
肺に水が溜まり呼吸困難となる肺水腫、意識障害を伴う尿毒症が進行し、放置すれば数ヶ月から2年以内に生命の危機に至ります。適切なタイミングで透析を導入すれば、生命予後が改善できる可能性もあります。
早期対応で進行を遅らせられる可能性
CKDステージG1〜G3の段階では、生活習慣改善と適切な薬物療法により腎機能低下を抑制できます。かかりつけ医のもとでの多因子治療は、CKDステージG3a患者の腎機能低下抑制に有効であるとされています。
- 定期受診による血液・尿検査での経過観察
- 減塩(1日6g未満)
- たんぱく質制限
- 適正体重維持
- 禁煙
- 血圧管理(130/80mmHg未満)
※糖尿病患者:HbA1c7.0%未満
徹底的な自己管理が必要となりますが、腎機能を保持するための鍵となるでしょう。制限等は医師の指導に従ってください。
