透析中のこむら返りはなぜ起こる?原因と今日からできる予防策

透析中のこむら返りはなぜ起こる?原因と今日からできる予防策

透析中にふくらはぎが急につって、動けないほどの痛みに襲われた経験をお持ちの方は少なくありません。こむら返りは透析治療の後半に起きやすく、除水による体内の水分バランスの変化や電解質の乱れが主な原因とされています。

この記事では、透析中のこむら返りが起こる仕組みと具体的な原因を整理したうえで、透析中に痛みが出たときの対処法や、日常生活で取り組める予防の工夫まで紹介しています。

原因を知り、自分に合った対策を見つける手がかりとしてお役立てください。

目次

透析中のこむら返りとはどのような症状か

こむら返りとは

医学的には「有痛性筋けいれん」と呼ばれ、筋肉が発作的に収縮して強い痛みをともなう状態を指します。

健康な方でも運動中や就寝中に経験することがありますが、血液透析を受けている方は透析の後半、とくに除水量が多い日に発生しやすいとされています。

症状はふくらはぎだけに限られず、体のさまざまな部位に現れる場合もあるため、どのような痛みや変化が出るかを知っておくと、いざというときに落ち着いて対応しやすくなるでしょう。

ふくらはぎに起こる痛みや筋肉の硬直の特徴

こむら返りで最も多いのが、ふくらはぎの腓腹筋ひふくきんに起こるけいれんです。筋肉が急に強く縮んだまま弛緩しなくなり、足を動かせないほどの激しい痛みが生じます。

透析を受けている方の場合、一般的なこむら返りと異なり透析中にベッドで横になっている状態で突然起きることが特徴といえます。

透析の後半、つまり除水が進んだタイミングで発生しやすく、通常は数十秒から数分程度で痛みが落ち着きます。ただし、けいれんが治まった後もしばらく鈍い痛みが残るケースもあり、透析中の大きなストレスの一つです。

痛みの程度や持続時間には個人差がありますが、つっている最中は自分の意思では筋肉を動かせない状態になります。透析のたびにこの症状が繰り返されると、透析そのものへの不安が増してしまうこともあるため、原因や対処法をあらかじめ把握しておくことが大切です。

腹部や胸など足以外に症状が出る場合もある

こむら返りはふくらはぎに起こるイメージが強いかもしれませんが、実は足以外の部位にも生じることがあります。血液透析の場合、下肢に多く起こるほか、上肢、腹部、胸部などに症状が出ると報告されています。

腹部のけいれんは「お腹がつった」という感覚に近く、胸部に起きた場合は息苦しさや圧迫感を感じる方もいます。足以外の部位で筋肉が急に硬くなると、最初はこむら返りだと気づかないこともあるでしょう。

透析中に足以外の場所で急な痛みや硬直を感じたときも、こむら返りの可能性があります。痛みの部位や程度を透析スタッフに伝えることで、除水速度の調整など早めの対応につながります。

ふくらはぎ以外の症状も見過ごさず、気になる変化があれば遠慮なく知らせましょう。

透析中にこむら返りが起こるとされる主な原因

透析中のこむら返りは、ひとつの原因だけで起こるものではありません。透析特有の事情が関係しており、以下のようないくつかの要因が重なって発生すると考えられています。

透析中にこむら返りが起こる主な原因
  • 除水にともなう体液量の変化
  • 電解質バランスの乱れ
  • カルニチンの不足
  • ドライウェイトの設定など

こむら返りが起こる仕組みはまだ完全には解明されていませんが、これらの要因が引き金となって血管が収縮し、筋肉への血流が減少することでけいれんが誘発されるとされています。

それぞれの原因を知ることで、自分に当てはまる要因を見つけやすくなるでしょう。

除水にともなう体内の水分量と血圧の変化

透析中のこむら返りの主な引き金とされるのが、除水による急激な体液量の変化です。

血液透析では、透析と透析の間に体にたまった余分な水分を数時間かけて取り除きます。この除水のペースが速すぎたり、一度に引く水分量が多すぎたりすると、血管の中の水分が急に減り、血圧が下がりやすくなります。日本透析医学会の維持血液透析ガイドラインでは、平均除水速度は15mL/kg/時以下を目指すとされています。

血圧が低下すると筋肉に届く血液の量が減り、酸素が不十分になることでけいれんが起こりやすくなります。とくに透析の後半は除水が進んだ時間帯であるため、こむら返りが集中して発生しやすいのです。

透析間の体重増加が大きいほど除水量も増えるため、結果として血圧の変動幅も大きくなります。全国腎臓病協議会では、透析間の体重増加を中1日でドライウェイトの3%以内、中2日で5%以内に抑えることが推奨されています。

カルシウムやマグネシウムなど電解質の乱れ

筋肉の収縮と弛緩にはカルシウムやマグネシウム、ナトリウム、カリウムといった電解質が深くかかわっています。透析によってこれらの電解質のバランスが急に変動すると、筋肉の制御がうまくいかなくなり、こむら返りの原因となることがあります。

血液透析では老廃物と一緒にこれらの電解質も除去・補正されるため、透析前後で血液中の濃度が変化します。

電解質と痙攣の関係例
カルシウム濃度が低い状態(低カルシウム血症)

神経や筋肉の興奮性が高まり、わずかな刺激でけいれんが起きやすくなる

マグネシウムの低下

上記と同様に筋肉のけいれんを引き起こす一因となる

電解質の異常は血液検査で確認できるため、こむら返りが頻繁に起こる場合は検査結果をもとに主治医と相談し、不足している電解質を補充する対応が取られることもあります。

日々の食事内容も電解質のバランスに影響するため、栄養指導を受けながら食生活を見直すことも一つの方法です。

透析で失われやすいカルニチンの不足

血液透析ではL-カルニチンが透析中に除去されます。ある研究報告では血中L-カルニチン濃度が透析前19.5 μmol/Lから透析後5.6 μmol/Lまで低下しました。

L-カルニチンとは

脂肪酸をミトコンドリアに運び、エネルギーを作り出す役割を担う物質です。体内では肝臓や腎臓で合成されるほか、肉類や乳製品からも摂取されます。

透析を繰り返すうちに体内のカルニチンが慢性的に不足し、筋肉がエネルギーを十分に作れない状態になると考えられています。

透析関連カルニチン欠乏症(DCD)とは

カルニチンが不足した状態を「透析関連カルニチン欠乏症(DCD)」と呼び、こむら返りや筋力低下、倦怠感などの症状と関連があると指摘されています。血中の遊離カルニチン濃度が20μmol/L未満の場合、カルニチン欠乏症と定義されています。

カルニチン欠乏が疑われる場合には、レボカルニチン製剤(エルカルチンなど)による補充が検討されることがあります。ただし、投与量や期間については確立されたガイドラインがまだなく、医師の判断のもとで個々の状態に合わせた対応が必要です。

ドライウェイトの設定が体に合っていない場合

ドライウェイトとは

ドライウェイトとは、透析で余分な水分を除去した後の目標体重のことです。日本透析医学会では「体液量が適正であり、透析中の過度の血圧低下を生ずることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」と定義されています。

ドライウェイトの設定が適正より高すぎても、低すぎても以下のように体への影響が出てしまいます。

ドライウェイト設定除水量体への影響
適正より
低すぎる
多くなる筋肉への血流が不足して、こむら返りが起こりやすくなる
適正より
高すぎる
少なくなる
※体に余分な水分が残る
心臓への負担が増える

体重は食事量や筋肉量の変化によって日々変動するため、ドライウェイトは定期的に見直す必要があります。

除水量が少ないにもかかわらずこむら返りが繰り返される場合は、ドライウェイトがきつすぎる可能性も考えられます。血圧や心胸比、心エコーの所見、むくみの状態などを総合的にみて判断するものですので、こむら返りの頻度が気になる方は主治医にドライウェイトの再評価を相談してみてください。

透析中にこむら返りが起きたときに行いたい対処法

透析中にこむら返りが起きた場合、痛みをできるだけ早くやわらげながら、透析を安全に続けることが求められます。自分でできる応急処置と、医療スタッフによる対応を組み合わせることが基本です。

ここでは、透析中にこむら返りが起きたときの具体的な対処の流れを順を追って紹介します。いざというときに慌てず行動できるよう、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

まず透析スタッフに知らせることが大切な理由

透析中にこむら返りが起きたら、まず透析スタッフに伝えることが最も大切なステップです。

こむら返りが起きる背景には血圧の低下が関係していることが多く、そのまま放置すると血圧がさらに下がり、めまいや意識がぼんやりするなどの症状に進む場合があります。

スタッフに知らせることで、除水速度の調整や一時的な除水の中断、補液、血圧を上げる処置など、状況に応じた対応を受けられます。

「このくらいなら大丈夫」と我慢してしまう方もいますが、痛みを我慢している間にも除水は進んでいます。小さな症状でも遠慮せず伝えることが、安全な透析につながります。透析中は体を自由に動かしにくい状況ですので、ナースコールやベッドサイドのボタンの位置を事前に確認しておくと安心です。

ふくらはぎの筋肉をゆっくり伸ばす応急処置

スタッフへの報告と並行して、自分でもできる応急処置があります。こむら返りが起きた筋肉をゆっくり伸ばすことで、けいれんが治まりやすくなります。

自分でできる応急処置
  • つま先を手前(自分の体の方向)に引き上げるようにして、腓腹筋を伸ばす
  • 透析中で起き上がれない場合は、タオルを足先にかけてゆっくり引っ張る
  • 壁が近くにあれば、足の裏を壁に押し当ててふくらはぎを伸ばす

ここで気をつけたいのが「ゆっくり」伸ばすという点です。急に強く伸ばすと筋肉を傷めてしまう可能性があります。痛みが少しずつやわらぐのを感じながら、無理のない範囲でじんわり伸ばしてください。膝はなるべくまっすぐに保つと、ふくらはぎの筋肉がよく伸びるとされています。

温かいタオルなどで患部を温めて血行を促す方法

けいれんが落ち着いた後は、つった部位を温めて血行を促すと再発の予防につながります。

透析中であれば、温かいタオルやホットパックを患部にあてる方法が手軽です。温めることで筋肉の緊張がゆるみ、縮んでいた血管が広がって血流が回復しやすくなります

温める際の温度は心地よいと感じる程度が目安です。やけどに注意しながら、5分から10分程度あてておくとよいでしょう。また、やさしくマッサージをして筋肉をほぐすことも、血行の回復を助けるとされています。

ただし、透析中はシャント側の腕や刺入部周辺に温熱を加えることは避けてください。温めてよい部位や方法について不安がある場合は、スタッフに確認してから行うと安心です。

漢方薬やカルニチン補充など医療面での選択肢

こむら返りが頻繁に起こる場合には、医師の判断のもとで薬による対応が検討されることがあります。

代表的なものの一つが漢方薬の芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとうです。芍薬と甘草の2つの生薬で構成され、筋肉のけいれんや痛みに対して速やかな効果が期待できるとされています。透析中にけいれんが起きた際に頓服(その場で服用すること)として使われる場合があります。

ただし、芍薬甘草湯に含まれる甘草には偽アルドステロン症(血圧上昇やむくみ、低カリウム血症など)のリスクがあり、長期にわたって毎日服用することは推奨されていません。日本プライマリ・ケア連合学会でも、芍薬甘草湯は「つったとき、またはつりそうなとき」の頓服が原則とされています。

カルニチン欠乏が確認された場合には、レボカルニチン製剤の投与が選択肢に入ります。そのほか、カルシウム剤の補充や筋弛緩薬なども医師の判断で使われることがあります。

いずれの薬剤も個人の状態に応じた使い分けが必要であるため、自己判断での服用は避け、主治医に相談してください。

今日からできる透析中のこむら返り予防の工夫

こむら返りは原因を一つずつ取り除いていくことで、発生の頻度を減らせる可能性があります。透析中にできる対策だけでなく、透析をしていない日の生活習慣も予防には深くかかわっています。

ここからは、日常生活の中で比較的取り組みやすい予防法を紹介します。すべてを一度に実践する必要はなく、できそうなものから試してみてください。

透析間の体重増加を抑える水分と塩分の管理

こむら返り予防として最も効果が見込めるのが、透析間の体重増加を小さく保つことです。体重増加を抑えれば除水量も少なくて済み、血圧の急激な低下を防ぎやすくなります。

透析患者の1日あたりの塩分摂取目安量は6g未満とされています。日本人の平均的な塩分摂取量は男性で約10.7g、女性で約9.1gという報告があり、意識的に減塩に取り組まないと目安量を大幅に超えてしまいがちです。

塩分を摂りすぎると血液中のナトリウム濃度が上がり、体は濃度を薄めようとして喉の渇きを引き起こします。結果として飲水量が増え、体重増加につながるという仕組みです。つまり減塩は、水分制限とセットで考える必要があります。

日常で取り入れやすい減塩の工夫
  • しょうゆやソースは「かける」より「つける」に変える
  • 出汁やレモン、酢、香辛料を使って味にメリハリをつける
  • 汁物や漬物、加工食品を控えめにする
  • 飲み水はペットボトルや水筒で1日分を管理する

体重管理で迷ったときは、透析前後の体重だけでなく自宅でも毎日体重を測定し、増減の傾向を把握しておくと医療スタッフとの相談にも役立ちます。

ふくらはぎを伸ばすストレッチや足首の運動

日ごろから筋肉の柔軟性を保っておくことも、こむら返りの予防に役立つとされています。透析をしていない日に簡単なストレッチを習慣にすると、筋肉が硬くなりにくくなり、けいれんの頻度を減らせる可能性があります。

簡単にできるストレッチ

壁に手をつき、片足を後ろに引いてかかとを床につけたまま前の膝をゆっくり曲げます。
後ろの足のふくらはぎが伸びている感覚を意識しながら、7秒から10秒ほどキープします。

透析中でもできる運動「足首回し」

つま先で大きく円を描くように足首を回転させるだけのシンプルな動きですが、ふくらはぎの筋肉を適度に動かすことで血行を促す効果が期待できます。

入浴後の体が温まっているタイミングで行うと筋肉が伸びやすく、心地よさも感じやすいでしょう。ただし透析患者の方は、運動の強度や種類について事前に主治医や理学療法士に確認することをおすすめします。

足の冷えを防ぐために取り入れたい生活習慣

冷えは筋肉を収縮させやすくし、血行を悪くする要因になるため、こむら返りの引き金となり得ます。足元を冷やさない工夫を日常的に取り入れることで、予防につながります。

足の冷えを防ぐ方法
  • 透析中はブランケットやレッグウォーマーで足元を温める
  • エアコンの風が直接足に当たらないよう位置を調整する
  • 透析をしていない日は湯船にゆっくり浸かり、体全体を温める
  • 就寝時はゆったりとした靴下を履き、足先の冷えを防ぐ

透析中の室温や空調の風向きが気になる場合は、スタッフに相談して調整してもらえることもあります。冷え対策は地味に思えるかもしれませんが、毎日続けることで体感として変化が出やすい工夫の一つです。

就寝前や透析日の過ごし方で意識したい点

就寝中のこむら返りも、透析を受けている方に多い悩みの一つです。寝る前にふくらはぎの軽いストレッチを行っておくと、夜間のけいれんが起きにくくなる場合があります。

寝る姿勢にも少し意識を向けてみてください。仰向けでまっすぐ寝た状態から急に寝返りをうつとこむら返りが起きやすいとの指摘があります。膝を軽く曲げた状態で横向きに寝ると、筋肉への負担が減りやすくなります。

透析日の朝は、体を急に動かさず、ベッドの中で足首を数回ゆっくり回してから起き上がるとよいでしょう。透析前に軽くふくらはぎを伸ばしておくことも、けいれんの予防になるとされています。

特別な道具は必要なく、数分で終わる小さな習慣ですが、続けてみる価値はあります。

こむら返りが繰り返すときは早めに相談を

透析中のこむら返りは多くの方が経験する症状ですが、何度も繰り返す場合や痛みが強い場合は、原因を詳しく調べたほうがよいこともあります。

こむら返りの背景には、ドライウェイトの設定のずれやカルニチン欠乏、電解質の異常といった対処可能な問題が隠れていることがあるからです。

また、透析とは別に、脊柱管狭窄症せきちゅうかんきょうさくしょうや末梢血管の病気、薬の副作用などが原因となっている可能性もゼロではありません。自分だけで原因を判断するのは難しいため、透析施設で率直に相談することが解決への近道です。

症状の頻度や状況を記録しておくと役立つ理由

こむら返りについて医師やスタッフに相談する際、「いつ」「どの部位で」「どの程度の痛みが」「どのくらいの時間」起きたのかを伝えられると、原因の特定や対策の検討がしやすくなります。

記録しておきたい項目例
  • こむら返りが起きた日時(透析中か、透析日以外か)
  • つった部位(ふくらはぎ、太もも、足の指、腹部など)
  • 痛みの持続時間(数分、数十分、それ以上か)
  • その日の体重増加量と除水量
  • 透析前後の血圧

記録を続けることで、「体重増加が大きい日に起こりやすい」「透析の後半に集中している」といった傾向が見えてくることがあります。ノートに手書きでもスマートフォンのメモでも構いません。こうした記録があると、ドライウェイトの再検討や薬の処方判断に医師が活用しやすくなります。

透析施設で相談できる内容とタイミングの目安

透析施設では、こむら返りに関するさまざまな内容について相談が可能です。たとえば、除水速度やドライウェイトの見直し、電解質やカルニチンの血液検査、漢方薬の処方、食事や水分管理に関する栄養指導など、幅広い対応が受けられます。

相談するタイミングに明確な基準があるわけではありませんが、以下のような場合は早めに伝えることをおすすめします。

こんな場合は、早めの相談がおすすめ
  • 透析のたびにこむら返りが起きるようになった
  • 痛みが以前より強くなった、または長引くようになった
  • 足以外の部位(腹部や胸部など)にもけいれんが出るようになった
  • こむら返りのせいで除水が予定どおりに行えないことが増えた
  • 市販薬やサプリメントの使用を考えている

「毎回のことだから仕方ない」とあきらめてしまう方もいますが、透析条件の微調整やカルニチン補充、漢方の活用など、改善の余地がある場合は少なくありません。透析スタッフは日常的にこうした相談を受けていますので、気になることがあれば次の透析時に声をかけてみてください。